主催者おすすめ小説~その7~
普段はマイペースな読書をしていますが、読書会を主催しているとトレンドな著者や作品はやはり気になります。
話題に著者、作品は多くの人の心に響くもんがあるのだと、改めて実感した2冊を紹介します。
●オーダーメイド殺人クラブ(著:辻村 深月)
中2の小林アンは、勉強もそこそこ、容姿もよく異性にモテる、スクールカーストの上位グループに所属する。
赤毛のアンから名前をとり、少女趣味を押し付けてくる母親や、些細なきっかけで勃発するクラスメイトの無視や仲間外れに辟易する毎日。
“私が人とは違う特別な存在”だと見抜いてくれる大人を待っている、アン。
彼女は、あることをきっかけに、クラスの“昆虫系”よ呼ばれる最底辺に属する徳川に、自分を殺してほしいと依頼します。
それは、前例が無い事件で、後世に長く世間の人々の記憶に残る事件でなくてはならない。
どんなシチュエーションで殺され、服装は、第一発見者は誰になるのか、綿密な打ち合わせとリハーサルをの為に、わざわざ東京の写真撮影用スタジオまで借りる二人。
あまりにも辻村深月さんの作品が人気があるので、手に取ってみて納得。
究極の中2病小説とよく言われる本作も、ただただ、“痛い”とばかり手放しに笑えません。
中学生特有の、焦り、思い上がり、謎のこだわりなど誰しも身につまされる要素が散りばめられ、チクリと心に刺さります。
●そして、バトンは渡された(著:瀬尾 まいこ)
主人公優子は、高校三年生にして、二人の母親と三人の父親によって育てられ、現在は三人目の父親である森宮さんと二人暮らしです。
優子を生んだ母親は亡くなり、父親と再婚した梨花さんとは、父親がブラジルに転勤になったタイミングで、二人で住むことに。
梨花さんは、次に泉ヵ原さんという初老の男性と再婚したかと思うと、あっさりと同級生の森宮さんと再再婚し、姿を消した。
血のつながらない親子でも、どこの家庭でも経済状況に違いはあれど、愛情をもって育てられた優子。
逆に本当の親子ではないからと、割り切った会話ができたりと、自分では世渡りがうまくいっていると思っていたけれど…。
本作は、2019年度本屋大賞の対象に輝いた作品です。
本作の中で、印象的だったのは梨花さんが、“出産という痛くて大変なことや、三歳くらいまでにとにかく泣いてばかりの時期を飛ばしては親になれたこと”をラッキーだと笑うシーンが印象的でした。
お腹を痛めてこそという人は多いですが、実際に梨花さんは、優子がピアノが欲しいと言っただけで裕福な泉ヵ原さんと再婚をしてしまう程、優子を愛していたのです。
親子の幸せって、他人の物差しで測っては絶対にいけない問題。
それを世間に打ち付ける、素晴らしい作品だと思います。
ヒット作には手が伸びない…。と敬遠しがちな方も是非★☆★